あなたの思考を、ちょっとだけエキサイティングにする。。
44田メディア対談、第二弾は「人の強み(才能)コネクター」として、44田寮のCoworking機能を最大限に引き出す部分でのご協力を頂いている辻 勇作(つじ ゆうさく)氏です。
■Coworkingで実現するコンサルティングの新しい形
(辻=辻、赤木=赤)
赤:本日は、ありがとうございます。辻さんは企業の組織・人事コンサルティングを主要事業としている株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティングにお勤めです。組織・人事の問題って大事なのは分かるんですけど戦略・IT系のコンサルに比べ成果を数値化しずらいと思うんですが、辻さんの仕事内容って具体的にどんな事をしていて、他のコンサル会社と何がどう違うんですか?
辻:いきなり先制攻撃ですね……(笑)。
組織・人事コンサルの仕事は大きくまとめると①社員教育 ②チーム作り ③評価制度構築 という3つがあります。一番ニーズが強いのは①社員教育。 例えば新人研修、学生と社会人の間にはギャップが凄いあって、その溝を埋める必要がある。社員がマネージャーや経営者層に昇格する時にも同じギャップがあって、管理職になってもプレーヤーマインドのまま仕事するからマネジメントにおいて支障が出て来る。これらの溝を埋める為に研修をやっています。
赤:研修ってどんなことやるんですか? 社員集めて講義するみたいな?
辻:講義って、ほとんどの人が消化出来ないで終わるんです。講義を聞いて、学んだことを行動に移したしても、今迄の行動習慣を変えるまでは至らずすぐに元に戻ってしまう。<講義→演習→実行→フィードバック>を繰り返して行かないと何も変わらないんです。にも関わらず、フィードバックまで継続的に研修をやり続けているコンサルタントが非常に少ない。なぜならフィードバックを高いレベルで実現する為には実務レベルでの経験が必要になってきます。しかし、多くのコンサルタントは既に会社で蓄積されているノウハウや過去データを基に講義しているだけがほとんど。だから、実践的なフィードバックができない。また、時間と労力がかかるフィードバックまでやるよりも講義で画一的なマニュアルにあてはめてしまう方が効率的に時間を使える。この状況はコンサル業界が時間単位での課金モデルを採用している事に起因していると思っています。
赤:それ凄く分かります。実際に44田寮に見学に来られた方の中にも、起業セミナーで「起業マニュアル」を教えてもらったものの、実際に自分のアイディアを事業に落とし込むことが出来ていないケースが多く見受けられます。先日も正にそんな症状の方が見学に来られてて3時間ほど話し込んでしまったのですが(笑)、人と対話する事で自分の考えが整理されていくプロセスが面白かったようで、「Coworking凄いね!」って言ってお帰りになりました(笑)。
辻:対話する相手も重要で、「問題解決のフレームワーク」と「実務」がどちらも高レベルで分かっている人と話さないと、逆に混乱してしまう。しかし、そんな優秀な人ほとんどいませんし、いたとしても相当忙しいから相談してもらう時間を確保するのが難しい。Coworkingの良さって、その人一人では問題解決のフレームワークしか理解してない人、実務しか知らない人でもその場で同時に相談出来るから色んな能力の集合知に近い効果が得られる。「三人寄れば文殊の知恵」がリアルに起こっている。それが凄く面白い。さっき時間単位での課金モデルを採用している事がコンサル業界の問題だって話をしたと思うんですけど、Coworkingの形を利用すれば、一人のコンサルタントにそれぞれの課題を抱えた複数のクライアントが同時に相談する事が出来て、しかもコンサルタントの弱い実務経験なんかを隣のクライアントがカバーしてくれる相互補助モデルが可能になると思うんです。そうなれば接客時間(営業時間)が効果的に短縮出来て、実務レベルでの経験(自分の勉強)に時間が割けるようになる。コンサルタントの能力が更に上昇してクライアントに、より効果的なサービスを提供する事が出来るかもしれない!
■壮絶な経験が異色なコンサルタント(辻勇作)の原点
赤:辻さんは実務レベルでの経験がないと高レベルでのフィードバックが出来ないし、世の中に本当に必要とされるコンサルティングを行う為にはそこに時間を割いて自分も勉強する仕組みを構築する必要があることを強調されていますが、辻さんがそこを意識する様になったきっかけを教えて下さい。
辻:前職の大手コンサル会社で、ある中古車販売の会社に出向していた時の話です。ちょうどその時、出向先の会社は粗利に連動した社内評価制度に変えようとしていたタイミングだったんですが、まだ粗利を個人単位で算出する仕組みや制度構築も甘いままで新制度に移行してしまいました。だから、期末に全社員の仕事や業績を評価をして給与を算出する時に困ったのです。しかし、評価して給与は決めなければなりませんから、「えいやっ」で給与を決めてしまった部分があり、本来のもらえるはずの給料よりもかなり少ない額になった人もいました。
辻:評価が全社的に適切に行われなかったことで、社内中が大混乱になりました。これまでの経営層に対する不満や、人間関係の鬱憤が爆発して経営陣への集中砲火にかわり、大爆発!「ふざけんなー」「給料返せー」という怒号の嵐でした。社長も社員との関係修復を試みて社員面談をしてみたものの、社長自体が社員から詰められるのに戦々恐々としていて、いっこうに解決策が見いだせない状況が続きました。このままでは会社が空中分解すると思い社長面談の時に切り出したんです。「僕に人事やらせて下さい。社内評価制度の問題を解決しますので」って。
赤:僕も前職でそんな事ありました。給与は生活に直結する問題だから社員のリアクションが半端ない! よく引き受けましたね。
辻:しかし引き継いでみたものの、一度大爆発した問題を修復する作業は想像以上に大変でした。そもそも、中古車1台の粗利をきちんと割り出す事が非常に難しかった。これは中古車は仕入れて売る以外に修理費用やパーツ代など様々な費用がかかります。さらに、売った後もお客さんからのクレームで修理費用が発生したり、とにかく色々な要因から、粗利集計するのにタイムラグが発生する。それをずっと追っていかないと中古車1台の利益を換算するのが不可能だと知りました。しかもそれまでの会社の経理処理体制もずさんだった為、過去の経費の仕分けなどもメチャクチャ。なのに、1台ごとの粗利をもとに評価する仕組みを導入したもんだから、ボロが出てメチャクチャになるのは当たり前でした。
辻:結局、人事評価制度を再構築する為には、会社内の管理体制の構築から経理処理の仕組みまで全て新たに構築しなおす必要があった。それらを構築してから、ようやく膨大な数の販売車1台ごとの経費を全て拾い上げて行き、各店舗ごとの経理の書類も全てひっくり返して利益を割り出して行った。それはもう、すごい仕事量でした。しかし、泣き言を言っている時間はなかった。自分達の取り組んでいる姿を見てもらい、しっかりとした評価制度が出来るまで、社員の皆には我慢してもらうしかない。しかも、一方的に作っても不信感が募るだけで効果を発揮しない事が想定できたので、社員一人一人と面談し、ニーズの吸い上げと説明を何度も繰り返し、全社員を巻き込んで構築して行くプロセスが必要でした。こういったプロセスを経て、少しづつ経営層の判断基準や考えていることを社員に伝えていき、ようやく全社員が納得する評価制度を構築する事ができた。結局、問題紛糾から再スタートまで約2年の歳月がかかりました。
めちゃくちゃしんどかったですが、逆に社内中が紛糾した状況に真っ向からぶつかったから、コンサルタントという立場の人間に会社中が期待して、協力してくれ、きちんとした成果が出せたと思うんです。なぜなら、普通の状況では、”コンサル”と聞いただけで「部外者の人」「正論だけ振りかざして実務のことは理解しない人」という目でみらてしまう。社員の協力も得られないし、全社を巻き込んだ動きには絶対ならない。逆に貴重な成功体験を積めたから、これまでのコンサル像ではダメだと気付く事が出来たんだと思います。
赤:壮絶ですね(笑)。でも今の話を聞くと、実務レベルでの奮闘の経験があるコンサルティング能力のある人が、組織の中にいることが重要ですね。本来は社内の人事担当者がそうあるべきなんでしょうが。
辻:そうなんです。でも経営層からすると、良い組織は作りたいけど売上げに直結しない人事に多額の人件費を払う余裕のない企業がほとんどです。逆にコンサルタント側も実務経験の乏しい人材が多くて一人ではそこまでのパフォーマンスを出せない。だから「Coworking」に価値を見出してるんです。同じ問題を抱えた数社の人事担当者とコンサルタントが44田寮に集まって「三人寄れば文殊の知恵」的にブレストする!そうすれば人事担当者に必要なコンサルティング能力と、コンサルタントに必要な実務ノウハウを互いにカバーし合って問題解決にあたれるかもしれない。しかも企業が負担するコンサルフィーが半分以下に出来て、その分長期間の継続的なフィードバックが出来る可能性もある。もう人事&組織問題は社外秘だからとか言ってる時代じゃない!
赤:それいいですね! 日本企業の人事担当者が今よりもっと価値創造型の仕事が出来るきっかけになると思うし、実現すれば「うつ」の撲滅や労働問題云々も改善出来るかもしれない。
辻:人事コンサルティングという職能を活用して、社会全体の適材適所の”最適化”を行うことで、社会全体のマネジメント能力を高める。そして世界中が日本企業に注目せざるを得ない状況に出来る! と僕は考えています。
■44田寮 寮長編集後記
辻 勇作氏を一言であらわすと【研究者】である。かれの興味のあることはその人の思考プロセスを理解して、そこから「その人の強み(才能)」を読み解き、適材適所を実現する事で最高のパフォーマンスを出す組織を生み出すことだと言う。最近流行の「脳科学者かっ!」と突っ込むと「なんでやねんっ!」と嬉しそうに関西弁でツッコミ返してきた。まんざらでもなさそうだ……。
StartUp44田寮 寮長:赤木 優理